理事長の挨拶

学問としての産業看護学の発展と高度の実践能力・実践方法の開発をめざして


日本産業看護学会理事長河野啓子
(四日市看護医療大学名誉学長)

看護学は、各領域の専門化、体系化が進み、目覚ましい発展を遂げています。産業看護学は、昭和の初めに産声をあげましたので、その歴史は80年余と看護学の中では新しい専門分野です。

そのため、看護基礎教育において産業看護学がカリキュラム上に位置付けられている教育機関は、まだ少ないのが実態です。そのような状況下において、先輩ならびに現職の産業看護職は、自主的にそして積極的に卒後教育を受け、優れた実践活動を行い、産業看護の有用性を社会に示してきました。

一方、近年、産業保健の動向が「法規準拠型」から、看護の専門性がより多く求められる「自主対応型」に変わりました。これらのことから、産業看護職は今や、働く人びとの健康の保持増進ならびにQOLの向上と経営者のCorporateSocialResponsibility(CSR)ならびに健康経営にとって、欠くべからざる専門職として、社会的認知を得つつあります。

しかし、その実践活動の基盤となる産業看護学が学問的に体系化され、高度な実践能力と実践方法が開発されているかといえば、まだなお未熟と言わざるを得ない状況です。産業看護ケアの質の均一化と向上を図るためには、経験知に依存するのではなく学問体系を確立すること、高度の実践能力・実践方法を開発すること、そして看護基礎教育における体系的な産業看護教育を行うことが重要と考えます。

これらの課題を解決するために、2012年12月8日、日本産業看護学会が設立され、私が初代の理事長を務めさせていただくことになりました。卒業してすぐ企業に就職し、産業看護を27年間実践したのち、産業看護教育に携わり25年が経過しました。その間、産業看護の奥深さと幅広さを実感するとともに、産業看護学の独自性・専門性についても確信が持てるようになりました。このたびの学会の設立は、産業看護学の発展の原動力となるものであり、また、産業看護学が看護専門分野の一つとして位置づけられる上でも意義あるものと考えます。

学会の円滑な運営につきまして、皆様の強力なご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。

主要経歴

氏名 河野 啓子 (こうの けいこ)
勤務先、職名、役職 四日市看護医療大学 名誉学長
学歴 1962年3月 東京大学医学部衛生看護学科卒業
1998年5月 保健学博士取得(東京大学第13886号)
職歴 1962年4月 富士電機株式会社入社 健康管理センターに勤務
1989年9月 産業医科大学医療技術短期大学専攻科 教授
1995年4月 東海大学健康科学部 教授
2007年4月 四日市看護医療大学 学長
2013年4月 現職
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